物理的にアメリカのオフィスを作った話

Kyosuke Inoue (@kyoro353)
DeployGate
Published in
10 min readAug 22, 2017

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フルスタックエンジニアとして低レイヤーを極めるべく2x4工法に挑戦!

こんにちは!Software Engineerの井上恭輔( @kyoro353 )です。今日はDeployGateの米国オフィスを物理的に作った話をご紹介したいと思います。

DeployGateは2016年3月に米国法人を登記し、海外のお客様向けの各種サポートを提供しています。しかし、実は今までリモートベースの活動がメインで自分たちのオフィスを持っていませんでした。

おかげさまで三期目を迎えた今年は、米国やベトナムを始め海外での利用事例が増えていることもあり、米国にも固定オフィスを作るか!という話になりました。が、私たちは小さなスタートアップ。オシャレなオフィスを作りたいけど、丸投げで依頼するお金も無いし、何より面白く無い…

…そうだ、DIYの聖地アメリカだし、自分たちで施工してしまおう!!

という考えに至った私は「大抵のプログラミングはできるのだから、きっとググれば家くらい作れるだろう」という発想のもと、早速「オフィス施工」プロジェクトをスタートさせました。

3DCADでオフィスを設計!大抵のものはホームセンターで手に入る、アメリカという国

借り受けたのは、何も無いただの車庫

幸いにも知人が物件を購入することになり、自由に改造しても良いガレージを貸して頂ける事になりました。とはいえ、元々は単なる車庫。床はコンクリートの打ちっぱなしで、壁は通気性に溢れすぎて寒く、このままではオフィスとして利用できません。そこでフローリングの床と内壁を新たに施工し、断熱材と床暖房を入れた快適なオフィス空間を作ろうと考えました。先立って、ブラウザから無料で使えるAutodesk HomeStylerというサービスで3D CADを使ってオフィスを実寸で設計します。この作業を行うことで、必要な建材の量や大まかな設計図などが確定するので後の施工で大変助かります。

測量をして3D CADでオフィスを設計します。無料&ブラウザから使えて凄い!

設計が終われば建材の買い出しです。日本のホームセンターと違い、DIYが盛んなアメリカでは建築業者が使うホームセンターと一般人が通うお店に区別はありません。近所のHomeDepotLowe’sに行けば、誰でも建築業者と同じ建材やパワーツールを入手することができます。

バンをレンタルして建材を買い付けます。あまりに重いので運ぶのを妻や家主夫婦に手伝ってもらいました!

購入した2x4材という木材は200本、フローリング材300枚、OSB材40枚。総重量500キロ以上の建材の搬送という、驚くほどの重労働に早くも施工を始めた事を大後悔し始めます。普段キーボードしか叩かない私は大切な事を忘れていました。そう、物理世界には重力加速度があるということを。

床をインチアップし、防音断熱材を入れてフロアを施工していきます

しかしもう後戻りはできません。まずは床と壁の施工です。グラスファイバーウォールを利用した防音断熱材を入れて、床と壁の基礎を作っていきます。アメリカの家屋は日本に比べて基本的に断熱性が低く、とても寒いので、年中短パン&Tシャツで過ごしたい私は、徹底的に断熱性にこだわりました。

極めて低レイヤーの開発を行っています

壁が無い場所には家屋の構造梁と強度を高め合うように、新しい壁を施工していきます。2x4(ツーバイフォー)工法という、木枠構造を用いた施工法で効率的に高い強度の壁面を造成していきます。立ち上げ期のスタートアップにはフルスタックエンジニアとしての素養が求められると聞いたことはありますが、まさかこのレベルの低レイヤー実装技術が求められる日が来るとは思ってもいませんでした。

何度も感電しました。120Vはさすがにパンチがあります!

もちろん電気工事なども自分で行います。アメリカでは他人からお金をもらわない限り600V以下の電気工事に関してライセンスは必要ありません。(工事内容によっては別途Building Permitを取得する必要があります)
とはいえ安全第一に施工を進めます。アメリカの電源ラインはアースライン(GND)が徹底された3線式なのが何より良いですね。

断熱材の上にアルミ蒸着シートを貼って遮熱性を高めます
壁材の隙間をパテで埋めて滑らかに。ドライウォール工法といいます。

柱が立ったら壁の施工です。断熱材の上にアルミ蒸着シートを重ねて遮熱性を高めます。今回は壁に合板を用いましたが、ドライウォール工法と同じように隙間やジョイントをパテで埋めていきます。これが中々骨の折れる作業で、パテを綺麗に塗るのは凄く難しい…! 職人の技があるのだと改めて実感しました。

壁が出来たらお楽しみのイカバトル、ではなく塗装の時間です。とはいえCSSでカラーコードを指定するだけの作業とはワケが違い、一度塗り始めると2時間や3時間はすぐに取られてしまいます。はみ出さないように塗るのは凄く大変で神経を使う作業で、雑な自分は、ああ、やっぱ俺エンジニアのほうが向いてるかもな…コードは書いたとおり動くし…なんて悩みながらも、楽しく作業を進めました。

壁の化粧木材は、1x4の板を大量に買ってきて、ガスバーナーで炙り、ステインというオイルを染み込ませてオシャレに仕上げています。妻や家主夫妻が作業を手伝ってくれました。

ヒートワイヤーが40度くらいに発熱します

最後の仕上げとして、床暖房の施工とフローリングの敷設を行います。床暖房は今回は電熱式のものをebayで購入し、ヒートワイヤーを張り巡らして部屋全体をくまなく温めます。フローリングはラミネート材を使い、ガレージ故に懸念された湿気や床暖房による温度変化に備えました。パズルのように組み合わせれば部屋の外形が一通り完成です!

フローリング材を組み合わせていきます
部屋が完成!

ここまでくれば苦しい戦いもほとんど終わり。あとは楽しい内装作業です!奥のマイクロキッチンを想定していた空間には水道を引き、夢の社内バーをDeployGateでも作ってみました。食洗機や製氷機も完備し、本格的にお酒を楽しむことができます。

最後のお楽しみ、社内バーの施工に取り組みます。

家具の選定と搬入も終わり、最終的にとても居心地の良いオフィス空間が仕上がってきました!

完成したDeployGate 米国オフィス Version 1.00です!
併設された社内ミニバー「THE GATE」

コミュニケーションスペースにはプロジェクターと150インチのスクリーンを設置し、小さな勉強会やもくもく会を開催できるようにしました。趣味で作り始めた社内バー「THE GATE」も手作りにしては思ったよりそれっぽく仕上がってきたので、大変満足しています。今後も作り込んでいくのがとても楽しみです。

施工にかかった期間は、着手から壁&フローリングが貼り終わるまでが1ヶ月、内装とバーの完成までが1ヶ月といったところで、全部で2ヶ月と少しという感じです。今思えば結構な突貫工事でしたが、作っている最中はとにかく楽しく、アドレナリンが常時出まくっていたので、昼夜を問わず施工をしていました。とはいえオフィスの施工は別にフルタイムの業務というわけではなうので、朝と夜の趣味の時間を使って少しずつ進めた感じです。ものづくりって楽しいね!

作ってみるか!ってやっぱり大事

今回のオフィスの施工は正直言ってメチャクチャ大変な作業でした。物理的な開発というのは、スキルに加えて筋力も要求されるので、気づけば施工開始前より少しだけムキムキになったような気がします。

しかし何より面白かったのは「全く未知の世界だけど、面白そうだし何か目的を持ってモノを作ってみる」という興味本位からの純粋なものづくり体験を、32歳にして改めて実践出来たことです。私にとっては毎日の施工に必要なスキルの全てが新しく、まるでプログラミングに初めて触れた中学生のときのように、出会う技術1つ1つがとても新鮮でした。

最近のエントリーでも話題になりましたが、数年前のインターネットと違い、気軽にWebサービスやアプリを作って公開するような事が自分の実体験としても少なくなってきなと感じていました。そこには様々な理由があるのでしょうが、なにより自分の場合は「既に大抵のものは作ってしまったなぁ」という慣れや、既存の技術への飽きみたいなものがあったんじゃないかなとも感じています。何か新しい学習をするために、目標となるプロジェクトを定めようと思っても、既にほとんどの体験やネタが出尽くしていて、魅力的なプロジェクトを見つけることができなかったのです。

今回改めて、新しいフィールドで「オフィスの施工」というアドレナリンと脳汁全開のプロジェクトを行うことを通して、ツーバイフォー工法やドライウォール工法、各種パワーツールや電気工事、アメリカの各種規格や法令、規制などを学ぶことができた結果、やっぱりモノを作るって楽しいんだな!という心からの興奮を、久々に思い出すことができました。

まずは作ってみる!ってとても大事。常に何かに挑戦し、興奮しながら学び続ける人間でありたいと強く感じる出来事でした。

いつでも遊びに来てください!

オフィスにはJOYSOUNDのカラオケ環境を導入しました!

というわけでオフィスも一通り整いましたので、東京オフィス同様に、金曜日には原則毎週TGIFを開催してオフィスを開放し、皆様とおいしい料理とビール&ワインを楽しもうと思っています!

最初は知り合い経由の紹介制ではじめようと考えていますが、遊びに来たい方はDeployGateのメンバーや周りの知り合いに気軽にお問い合わせください。

また、AmazonのWishlistもひっそりと置いておきますので、開所祝いを贈って頂ける方は宜しくお願いできれば幸いです!(USアカウントです)

DeployGateを今後ともどうぞよろしくお願い致します!

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